診療案内
Treatment
婦人科
Gynecology
近年、女性のライフスタイルの変化から婦人科診療の需要が高まりつつあります。
女性は、それぞれのライフステージに応じて女性ホルモンの影響を受け、カラダとココロに大きな変化がおこります。
女性ヘルスケアとは、思春期から老年期までのすべてのライフステージにおいて、女性の心身にまつわる疾患に対して、健康管理などの予防から治療までを行う専門分野です。
女性ヘルスケア専門医、指導医が在籍している当院では、女性ヘルスケアの観点からも婦人科診療を行っております。
月経とは「通常、約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」のことを言います。
正常な範囲から逸脱した状態を月経異常といい、精神的・身体的なストレスなどによるホルモンバランスの乱れや、子宮筋腫や子宮内膜症等の疾患等が原因で起こることがあります。
正常月経
月経周期
25日〜38日
月経量
20〜140ml、平均50〜60ml
出血持続日数
3〜7日
月経随伴症状
痛みなど、日常生活に支障のない軽度のもの
月経異常には様々な症状があります。
以下のような気になる症状がありましたら、医師にご相談ください。
①月経の開始と閉止の異常
早発月経
初経が10歳未満
遅発月経
初経が15歳上
原発性無月経
18歳で初経をみない
早発閉経
閉経が40歳未満
遅発閉経
閉経が55歳以上
②月経周期の異常
頻発月経
月経周期が24日以内
稀発月経
月経周期が39日以上
無月経
月経が3ヶ月以上停止したもの
③月経量の異常
過多月経
月経量が異常に多いもの
過少月経
月経量が異常に少ないもの
④月経持続日数の異常
過長月経
月経持続日数が8日以上
過短月経
月経持続日数が2日以下
⑤月経随伴症状
月経困難症
月経に随伴して起こる病的症状(腹痛、腰痛、頭痛など)
月経前症候群
黄体期に発生し月経の開始後数日で消失する精神的、身体的症状
月経期間中に月経に伴って起こる病的症状のことを言います。
代表的な症状は、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、いらいら、などです。
月経のたびにつらい症状を我慢していませんか?もしかするとそれは「月経困難症」かもしれません。
月経困難症はお薬によって症状を緩和したり、改善することができます。あなたのつらい症状を良くするお手伝いができるかもしれません。
我慢しすぎる前に、当院にご相談ください。
月経困難症には機能性月経困難症と器質性月経困難性があります。
機能性月経困難症
原因となる器質性疾患を認めない月経困難を指します。若年者に多くみられます。
初経後2~3年から始まることが多く、子宮頸管の狭小化や内因性の痛み物質(プロスタグランジンなど)による子宮の過収縮が原因と考えられています。
器質的月経困難症
子宮や卵巣といった骨盤内に痛みの原因となる病気があるものを器質性月経困難症といいます。
原因として考えられる病気には、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などがあります。
月経困難症の診断と治療
診断
治療方法
鎮痛剤
痛みの原因となるプロスタグランジンの合成阻害薬である非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs、ロキソプロフェンやジクロフェナクなど)が有効です。
痛みを我慢し続けたあとに内服すると、既に痛み物質であるプロスタグランジンが産生されているので、効果がでるまでに時間がかかります。
そのため、鎮痛剤は痛みを感じたらすぐに内服するようにしましょう。
鎮痙薬
ブチルスコポラミンは子宮の過剰な収縮を抑えて痛みを和らげます。鎮痛剤と併用するとより効果的です。
プロゲスチン製剤
子宮内膜の増殖抑制とプロスタグランジンの産生を抑制する効果があるプロゲスチンを投与することにより、月経量を減らし痛みを軽減します。
エストロゲンが配合されていないため、血栓症リスクなどによりピルを内服できない方も使用できます。不正出血を伴う事が多くあります。
LNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)
ミレーナ®は黄体ホルモンが添加された、子宮内に留置するデバイスです。
子宮内に留置することにより、子宮内膜の増殖抑制とプロスタグランジンの産生を抑制して、月経量を減らし痛みを軽減します。
過多月経や月経困難には保険適応があります。外来で当日挿入できます。
漢方薬
月経痛に対して様々な漢方薬治療があります。症状に合わせて適切な漢方薬を選択します。鎮痛剤やホルモン剤との併用も可能です。
月経時の出血量が多いことを過多月経といいます。月経時の出血量は他の人と比較しにくく、たくさん出血していても、変化がなければそんなものだと思ってしまい、ほとんどの女性が放置してしまっていることでしょう。
しかし、その多すぎる経血は、もしかすると「過多月経」かもしれません。
過多月経の定義は以下の通りです。
過多月経
経血量が140ml以上
過長月経
出血日数が8日以上続くもの
しかし、経血の量を実際に計測することは困難なため、どこからが過多月経であるかの判断は難しいものです。
経血に血のかたまりがたくさん混じることがある、昼間に夜用のナプキンを使わなければならないほど出血がある、ナプキンが1時間ももたず頻繁にとりかえる必要がある、健康診断で貧血を指摘されているなどの症状がある場合、過多月経の疑いがあります。
経血量が80mlを超えると60%以上の女性が貧血を呈するといわれています。
貧血にともない倦怠感が続く、めまいや立ちくらみ、労作時の息切れや動悸(階段を昇ったときに息切れがあるなど)を認めるようになります。
また、過多月経には機能性過多月経と器質性過多月経があります。
機能性過多月経
原因となる器質性疾患を認めない過多月経を指します。
ホルモンバランスの異常や無排卵周期などの機能的な原因が認められます。
特発性血小板性紫斑病(ITP)などの血液疾患や、抗凝固剤のために生じることもあります。
器質性過多月経
子宮に原因となる病気があるものを器質性月経困難症といいます。
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどの疾患が原因となります。
年齢によっては子宮体癌の検査も重要となります。
過多月経の診断と治療
診断
治療方法
LNG-IUS(レボノルゲストレル放出子宮内システム)
ミレーナ®は黄体ホルモンが添加された子宮内に留置するデバイスです。
子宮内に留置することにより、子宮内膜の増殖抑制とプロスタグランジンの産生を抑制して、月経量を減らし痛みを軽減します。
過多月経や月経困難に保険適応があります。
外来で当日挿入できます。
抗線溶薬(トラネキサム酸)
止血作用のある薬で、月経中のみ内服します。
その他、貧血を伴う場合には、増血剤(鉄剤)を投与して対応します。
月経周期は通常25日〜38日と定義されており、そこからはずれるものが月経不順となります。
月経周期が24日以内のものを頻発月経といいます。
排卵までの期間が短くなっていたり、排卵後の黄体期が短くなっている(黄体機能不全)もの、また排卵のない無排卵性月経などに分類されます。
初経がきてから間もない時期や閉経前によくみられます。
月経周期が39日以上のものを稀発月経といい、月経が3ヶ月以上停止したもの続発性無月経といいます。
無排卵周期症や卵胞の成熟が遅れることにより卵胞期が長くなってしまうことが原因です。
更に周期や出血の量、期間からみて月経とは異なる出血である場合は機能性子宮出血といいます。
原因
急激なダイエットや肥満、過度なストレスや環境の変化、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺疾患、高プロラクチン血症、早発卵巣不全(POI)、その他
診断
問診と診察(内診)、超音波検査による子宮卵巣の確認、採血検査により月経にかかわる様々なホルモンの測定を行い診断を行います。
治療
症状や原因、妊娠希望の有無などによって治療方法は異なります。
ホルモン剤や漢方薬などを使用し月経周期を整える治療を行いますが、症状や原因によっては薬物治療などは行わず様子を見ることもあります。
生活習慣やストレスが原因となりホルモンが乱れることもあるため、規則正しい生活を心がけることが大切です。
月経以外に性器から出血することを不正性器出血といいます。
ホルモン分泌の異常や様々な病気が原因となります。
新しい血液は赤いですが、古い血液は赤黒くなったり茶色くなることがあります。
排卵期出血など病気ではない出血もありますが、重大な病気の症状であることもありますので繰り返し起こったり、長期間持続する場合は検査が必要となります。
原因
腟や子宮の炎症
感染症、萎縮性腟炎、子宮内膜炎など
ホルモン異常
卵巣機能不全、月経異常など
良性腫瘍
子宮頸部は内膜ポリープ、子宮筋腫など
悪性腫瘍
子宮頸がん、子宮体がん、卵巣腫瘍、子宮肉腫、腟がんなど
妊娠に関連するもの
流産、異所性妊娠など
診断
不正出血を起こす病気は数多くあります。
問診と診察(内診)、超音波検査、必要に応じて採血検査、感染症の検査などを行い疾患の有無を診断します。
自分ではどこからの出血かわからないことが多く、尿や肛門からの出血であることもあります。
一度の検査で異常が見つからなくても、出血を繰り返したり長期間続くときにはごく初期の病気が潜んでいることがあります。
検査を繰り返したり、以前の状態との違いを比較することで診断できることもあります。
治療
原因となる疾患が特定できれば、その疾患に対する治療を行います。
出血量が多かったり、長期間持続する出血に対してはホルモン剤や止血剤などを使用して止血することがあります。
ホルモン剤や漢方薬などを使用し月経周期を整える治療を行いますが、症状や原因によっては薬物治療などは行わず様子を見ることもあります。
月経前症候群(PMS)は「月経前3-10日間の黄体期に続く精神的あるいは身体的症状で月経発来とともに減弱あるいは消失するもの」と定義されています。
精神症状が主体で強い場合は月経前不快気分障害(PMDD)とされます。
原因
はっきりとした原因は不明です。
しかしながら、排卵後に症状が認められることから、卵巣から基礎的に分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)と排卵後に分泌される黄体ホルモンが関連していると考えられています。
また脳内のGABA(ガンマアミノ酪酸)作動性およびセロトニン作動性神経系が発症に関与するとされています。
また、ストレス、飲酒や喫煙などの生活習慣、肥満、精神疾患の既往などがリスク因子とされており、ホルモン以外も多くの要因が関連していると考えられています。
症状
イライラ、過腹部膨満感、下腹部痛、腰痛、頭重感、易怒性、頭痛、乳房痛など多彩な症状があります。
日本人女性を対象とした調査では治療を要するPMSが5.4%、PMDDが1.2%であったとの報告されています。
月経前症候群(PMS)診断基準
過去3回の連続した月経周期のそれぞれにおける月経前5日間に、下記の情緒的及び身体的症状のうち少なくとも1つが存在すれば月経前症候群と診断できます。
情緒的症状
身体的症状
これらの症状は月経開始後4日以内には症状がなくなり、少なくとも13日目まで再発しません。
いかなる薬物療法、ホルモン摂取、薬物やアルコール使用がなくとも存在します。その後2周期にわたり繰り返し起こります。
社会的、学問的または経済的行動・能力に明確な障害を示します。
産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023; 日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会: 190
月経前不快気分障害(PMDD)の診断基準
A
ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも5つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経修了後の週には最小限になるか消失する。
B
以下の症状のうち、1つまたはそれ以上が存在する。
1
著しい感情の不安定性
2
著しいいらだたしさ、怒り、または対人関係の摩擦の増加
(例:気分変動;突然悲しくなる、または涙もろくなる、または拒絶に対する敏感さの亢進)
3
著しい抑うつ気分、絶望感、または自己批判的思考
4
著しい不安、緊張、および/または“高ぶっている”とか“いらだっている”という感覚
C
さらに、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)が存在し、上記基準Bの症状と合わせると、症状が5つ以上になる。
1
通常の活動(例:仕事、学校、友人、趣味)における興味の減退
2
集中困難の自覚
3
倦怠感、易疲労性、または気力の著しい欠如
4
食欲の著しい変化、過食、または特定の食物への渇望
5
過眠または不眠
6
圧倒される、または制御不能という感じ
7
他の身体症状、例えば、乳房の圧痛または膨脹、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚、体重増加
D
症状は、臨床的に意味のある苦痛をもたらしたり、仕事、学校、通常の社会活動または他者との関係を妨げたりする(例:社会活動の回避;仕事、学校、または家庭における生産性や能率の低下)。
E
この障害は、他の障害、例えばうつ病、パニック症、持続性抑うつ障害(気分変調症)、またはパーソナリティ障害の単なる症状の増悪ではない(これらの障害はいずれも併存する可能性はあるが)。
F
基準Aは、2回以上の症状周期にわたり、前方視的に行われる毎日の評価により確認される(注:診断は、この確認に先立ち、暫定的に下されてもよい)。
基準A~Cの症状は、先行する1年間のほとんどの月経周期で満たされていなければならない。
産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023; 日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会: 191
治療
PMS/PMDDの症状、背景は患者さんごとに異なり「何らかの検査値が正常範囲を超えたからこの治療をしなければならない」といった明確な基準がありません。
まず症状を明確にするカウンセリングや生活指導、運動療法などを行います。
また、症状に合わせて薬物治療を行います。
子宮筋腫は子宮筋層の一部が異常に増殖し、こぶのような腫瘍ができる病気です。
はっきりとした原因は分かっておらず、子宮の筋肉の中にできた腫瘍の芽が、女性ホルモンであるエストロゲンの刺激を受け成長すると考えられています。
子宮筋腫は珍しくない腫瘍で、小さなものも含めると30歳以上の女性の20-30%に認められると言われています。複数個できることも多く、数や大きさは様々です。できる場所によって、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)に分けられます。
症状
主な症状は、月経量が多くなる過多月経と月経痛が酷くなる月経困難です。
その他に、月経以外の出血、腰痛、頻尿などがあります。
大きさや出来る場所によって症状が異なり、粘膜下筋腫は小さくても症状が強く、月経量が多くなります。
妊娠しにくくなる不妊症や流産しやすいなどの症状がみられることがあります。
一方で、子宮の外側にできる漿膜下筋腫は大きくなっても症状がでないことがあります。
診断
内診と超音波検査(経腟および経腹)で診断します。
大きな筋腫や多発しているものに関してはMRI(Magnetic Resonance Imaging 磁気共鳴画像)検査を考慮します。
子宮筋腫の治療
治療
小さくて無症状の場合は治療の必要はなく定期的に大きさのチェックをしていきます。
治療方法には薬物治療と手術治療があります。
薬物治療
子宮筋腫を根本的に治す薬は今のところありません。
過多月経に対して止血剤や増血剤、月経困難症に対して鎮痛剤や漢方など症状にあわせて投薬を行います。
また、月経困難症に対して低用量エストロゲン・プロテスチン配合剤などを使用することもあります。
症状が強い場合や手術治療を予定している方には、月経を止める治療(偽閉経療法)を行うことがあります。
薬によって閉経状態をつくりだし症状を緩和しますが、更年期様の症状が出たり、骨量が減少するため半年以上の治療できません。
治療中は子宮筋腫が小さくなりますが、治療を中止すると元の大きさに戻りますので、手術前や閉経が近い年齢の方などの一時的な治療として行います。
手術治療
手術では子宮を取ってしまう「子宮全摘術」と、筋腫だけ取る手術「筋腫核出術」があります。
将来子供がほしい人などは筋腫だけ取る手術を実施しますが、出血が多くなったり、子宮筋腫が再発してくることがあります。
腹腔鏡やロボットを使った低侵襲手術を希望の方は、総合病院へ紹介させていただきます。
大きさや、出来た場所によっては低侵襲手術の実施が難しい場合もあります。
子宮内膜症とは、本来は子宮内にある子宮内膜という組織が子宮の外で増えてしまう病気です。
生殖年齢女性の約10%に認められ、20-30歳代での発症が多く、30-34歳にピークがあるといわれています。
子宮内膜症ができやすい場所として卵巣や子宮筋層内、お腹の中などがあげられます。
子宮筋層内に内膜症組織が発生し子宮筋層が肥厚するものを子宮腺筋症といい、卵巣内に発生し袋状に腫れてしまうものをチョコレート嚢胞といいます。
稀ですが肺や腸にもできることがあります。
子宮内膜症組織は女性ホルモンに影響され、月経周期に合わせて増殖し出血します。
内膜症組織からの出血が排出されずに、お腹の中や卵巣内にプールされたり、腸管やお腹の壁など周囲の組織と癒着をおこすため、月経痛をはじめとした様々な痛みや症状を呈します。
また、不妊症の原因にもなります。
症状
内膜症女性の約90%に月経痛があります。
また、月経時以外にも慢性的な下腹痛、排便痛、性交痛などが認められることがあります。
また、妊娠を希望されている女性では不妊症が問題となります。
診断
自覚症状と診察の所見、超音波検査などの画像所見から総合的に診断します。
確定の診断は手術などで直接病巣を見て、採取した組織の標本を観察して診断します。
子宮腺筋症や卵巣チョコレート嚢胞は画像検査により診断できます。
子宮内膜症・子宮腺筋症の治療
治療
治療方法には薬物治療と手術治療があります。
大きく分けて薬による治療と手術による治療があり、症状の種類や重症度はもちろん、年齢、妊娠の希望などを総合的に判断して最適な治療法を選択していきます。
月経困難症などの痛みに対しては鎮痛剤を使用します。
症状が強いときは、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤・ピル)やプロゲスチン剤などを使用します。
女性ホルモンの分泌を抑えたり直接病巣にホルモンを作用させることにより、病期の進行を抑えたり症状を緩和します。
また、症状が強い方に関しては月経を止める治療(偽閉経療法)を行うことがあります。
薬によって閉経状態をつくりだし症状を緩和しますが、更年期様の症状が出たり、骨量が減少するため半年以上の治療できません。
治療を中止すると症状が戻りますので、手術前や閉経が近い年齢の方などの一時的な治療として行います。
挙児希望がなく子宮腺筋症や卵巣チョコレートのう胞などの病巣部がはっきりしている場合には手術治療を考慮します。
腹腔鏡などの低侵襲手術を希望される方は、総合病院へ紹介させていただきます。
子宮内膜症は、月経がある間は女性ホルモンの影響により進行していく病気です。
手術後でも再発率は高く、継続的なホルモン剤投与などの治療が必要となります。
定期的な受診をお願いします。
子宮内膜ポリープは子宮内膜が異常に増殖して子宮内腔へ突出した腫瘍であり、不正出血や過多月経等の症状を呈することがあります。
経腟超音波による診察で偶然発見される無症状のものも多くあります。
不妊症の原因となることもあり、子宮内膜ポリープを摘出した群は非摘出群に比べ人工授精後の妊娠率が高くなるとの報告があります。
症状
不正出血、過多月経、不妊症など
診断
経腟超音波検査で診断できます。また、子宮内膜細胞診でがんかどうかの確認を行います。
治療
小さくて無症状の場合は治療の必要はなく定期的に大きさのチェックをしていきます。
出血などの症状がある場合、ホルモン剤の投与を行ったり、子宮鏡による内膜ポリープ切除などを行います。
隣接するIVF白子クリニックと連携して、子宮鏡下内膜ポリープ切除を行っております。
細経硬性子宮鏡を用いた子宮内膜ポリープ切除
子宮鏡とは、子宮の内腔を見るために作られた内視鏡です。
子宮の入り口から子宮の内腔へ子宮鏡を挿入し、子宮内をモニターに映し出すことができます。
子宮鏡手術とは、画面に映し出された子宮内の映像を見ながら手術操作を行う内視鏡手術の一つです。
子宮鏡下手術では観察に使われる映像装置の他に、手術に必要な器具類を装備できる治療用の硬性子宮鏡を使用します。
近年の子宮鏡技術の革新によって、径がより細い治療用硬性子宮鏡が開発されました。
細径子宮鏡を使用することで、頚管拡張をによる負担を軽減することができ、少量の麻酔での手術が可能となりました。
女性医学(女性ヘルスケア)は思春期から老年期までのすべてのライフステージで、女性の心身にまつわる疾患に対して健康管理などの予防から治療までを行う専門分野です。
当院には、日本女性医学学会が認定する女性ヘルスケア専門医が在籍しております。
また、女性ヘスケア専門の指導医師も在籍しており、ヘルスケア専門医を育成する認定研修指導施設でもあります。
思春期になり、月経が始まる頃から女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が増え、更年期には減少していきます。
そういった女性ホルモンの変化から、年代別にさまざまな女性特有の症状や訴えが出てきます。そういった症状に対しては、女性ヘルスケアに関する知識と患者さんにあわせた個別対応が重要であり、患者さんのご希望やライフステージに合わせた治療を計画する必要があります。
月経不順、月経困難症、月経前症候群など月経にまつわる症状や更年期障害など、女性特有の悩みに女性ヘルスケア専門医が対応します。
女性はライフステージ別に女性ホルモンレベルが変化することから、様々な症状を呈します
思春期とは、乳房発育などの第二次性徴に始まり、初経を経て第二次性徴が完了し、月経周期がほぼ順調になるまでの期間をいい、8-9歳頃から17-18歳頃までとされています。
思春期にみられる症状としては、月経困難や月経不順、無月経あるいは不正性器出血などの月経にまつわる症状が多いです。
思春期に起こる月経異常のほとんどは卵巣発育や女性ホルモンの環境が未熟なために起こりますので、体の成長と卵巣の成熟により規則正しい月経が来るようになることが多いです。
しかし、治療が必要な婦人科疾患が原因であったり、ごくまれに重大な病気が隠れていることがあります。気になる症状がありましたら受診をお願いします。
思春期に産婦人科を受診するのは少し気が引けると思います。
でも、悩みがあるのはあなただけではありません。
心配なことがあれば、まず相談だけも問題ありませんので、お気軽に受診してください。
あなたの助けになれるように、いつでもお待ちしております。
思春期の様々な症状
...など
その他お悩みがあればいつでもご相談ください。
女性のからだが更年期になり卵巣の活動性が次第に低下していき、月経が停止した状態を「閉経」といいます。 月経が停止した時点で閉経と判断することは難しく、1年間以上の無月経を確認した時に「閉経」と判断します。
日本人の平均閉経年齢は50歳頃ですが、個人差が大きく早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経となります。
手術で子宮を摘出した後のような月経で閉経を判断できない場合には、採血検査でホルモン値を測定します。
FSH(卵胞刺激ホルモン)値40mIU/mL 以上かつE2(エストロゲン)値20pg/mL以下をもって閉経後と判断します。
更年期障害
更年期とは生殖器と老年期の間の移行期で閉経の前後5年間と定義されています。
更年期に出現する多種多様な症状で、他の病気が原因となっていないものを「更年期症状」とよび、これらの症状で日常生活に支障をきたすものを「更年期障害」といいます。
卵巣機能の低下よる女性ホルモン(エストロゲン)の減少や乱れに加え、社会的、環境的な要因が複雑に絡み合って自律神経失調症状や精神神経障害症状などの様々な症状が出現します。
更年期障害の症状
1
自律神経失調症状
血管運動神経症状 体や顔のほてり(ホットフラッシュ)、発汗、冷え、動悸
胸部症状 胸痛、息苦しさ
全身的症状 易疲労感、頭痛、肩こり、めまい
2
精神神経症状
抑うつ、情緒不安定、意欲低下、不安感、易怒性、涙もろくなるなど
3
その他
運動器症状 肩こり、関節痛、腰痛、筋肉痛など
消化器症状 腹痛、食欲不振、悪心・嘔吐、下痢など
皮膚粘膜症状 湿疹、掻痒感など
泌尿生殖器症状 排尿障害、頻尿、性交痛など
更年期障害の診断
更年期障害の明確な診断基準は存在しません。
多彩な症状を訴えて受診していただいたときに、更年期の症状、障害と考えて矛盾しないかどうかが判断基準となります。
同じような症状を生じる他の病気を除外することも重要です(甲状腺疾患、糖尿病、精神疾患、リウマチなど)。
更年期の時期(閉経の前後5年、多くは40歳中頃~50歳中頃にかけて)に、更年期を疑う症状が出てきた場合一度ご相談ください。
更年期になってもすべての女性が更年期障害になるわけではなく、その症状や程度は一人一人異なります。
症状がつらいと感じている方は我慢せずに受診していただき、ご自身の事を話していだくことが大切です。
その上で、困っている、つらい症状に対してできる事を一緒に考えていきましょう。
更年期障害の治療
更年期障害は女性ホルモンの減少に加え、社会的・環境的要因が複雑に関係しているため、まず十分な問診を行います。
必要な場合には薬物治療を行います。
ホルモン補充療法(HRT)
更年期障害の主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)のゆらぎと減少にあるため、少量のエストロゲンを補う治療を行います。
HRTに期待される効果
ほてり・ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗などの血管運動系の症状の改善
悸や知覚異常など自律神経系の不調の改善
閉経後骨粗しょう症の予防と改善
泌尿器生殖器の粘膜が萎縮や乾燥して起こる萎縮性腟炎や性交痛などの改善
HRTの副作用
不正性器出血、乳房の張りや痛み、むくみなどを感じることがありますが、続けているうちに消失するものが多いですが、症状が継続する場合やひどい場合は医師に相談してください。
子宮体がんリスク
子宮のある女性にエストロゲンのみを投与すると子宮体がんのリスクが上昇します。
黄体ホルモンを併用することによりリスク上昇を防ぐことができます。
乳がんリスク
エストロゲンと黄体ホルモンを併用したHRTは乳がんのリスクがわずかに上昇しますが、5年未満の施行であればリスク上昇はありません。
HRTを中止したあとは、リスクの上昇はなくなります。
HRTでの乳がんリスクは生活習慣病などによるリスク上昇と同等かそれ以下ということがわかってきており、HRTによる乳がんリスクへの影響は小さいと考えられています。
HRTを行っているかどうかにかかわらず、乳がんになる女性は増え続けています。
定期的に乳がん検診や子宮がん検診を受けていただき、早期発見をすることが大切です。
HRTので使用するエストロゲンの投与経路と投与方法
HRTに用いるエストロゲン剤には飲み薬、貼り薬、塗り薬などいくつかのタイプがあり、投与法も様々です。
よく話し合いながら、その人に合った最適な治療法を選択していきます。
1
経口製剤(錠剤)
エストロゲンは腸から吸収され、肝臓を通って血液中に入ていいます。
胃腸や肝臓に負担がかかることがありますが、投与が簡単です。
2
経皮製剤(パッチ・ジェル・クリーム)
エストロゲンは皮膚から吸収され血液中に入るため、胃腸や肝臓への負担が少なく有害事象が少ないです。
かゆみやかぶれなどの皮膚症状が出ることがあります。
漢方薬
更年期障害は多彩な症状を持つため、漢方薬は良い適応となります。
漢方薬には様々な種類があるため、症状に応じて薬剤選択を行います。(不安感・のぼせ・イライラには加味逍遙散、不安・不眠には加味帰脾湯、冷え・のぼせには桂枝茯苓丸、発汗には防已黄耆湯、動悸・むくみには当帰芍薬散、疲れやすさには補中益気湯など)
また、HRTなど他の治療との併用も可能です。それぞれの体にあった治療選択をしましょう。
プラセンタ注射
プラセンタとは胎盤のことです。
ヒトの胎盤から抽出された有効成分であるプラセンタエキスを注射して治療を行います。
免疫力を高める、活性酸素を除去してアンチエイジングに作用する、アレルギーを抑える、疲労回復、美肌促進などの効果が期待できます。
更年期障害に対してのプラセンタ注射は保険適用となっております。
女性には月経周期があり、その生活は女性ホルモンの分泌につねに影響されています。
特に、思春期から妊娠・出産期、更年期に至るまで、女性ホルモンの分泌は大きく変動し、さまざまな不調が体におこります。
そういった中で、漢方治療は不定愁訴や自律神経失調症などに対して効果を発揮します。
漢方では、漢方の独特の考え「気・血・水(き・けつ・すい)」から不調を探っていきます。
女性には月経があるため、特に気や血の不調から様々な症状が来ていると捉えられます。
漢方薬はその人の体質や体格などを考慮して処方しますので、その人とぴったり合えばよく効きます。
合わない場合は、他の漢方薬に切り替えたりホルモン治療など他の治療で対応します。
漢方は、一人一人の症状や特徴に対応する、オーダーメイド医療です。
外来で医師と相談し、体にあった漢方治療を行っていきましょう。
性感染症は、性的接触を介して感染する感染症を指します。
性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。
性感染症は、かゆみや痛みのような症状が問題であるだけではなく、感染症の種類によっては不妊の原因となったり、将来の心血管系などに深刻な合併症や後遺障害を残したりすることもあります。
さらに、生殖年齢にある女性が性感染症に罹患したまま妊娠した場合、母子感染(母親から赤ちゃんへの感染)により、赤ちゃんに影響を及ぼし障害が残る可能性もあるため、きちんと治療することが重要です。
性感染症は、比較的軽い症状にとどまったりや無症状のこともあるため、感染した人が気付かないままパートナーに感染させてしまうこともあります。
このため、不安に感じたらまず検査を受けることが大切です
主な性感染症
クラミジア、淋菌、トリコモナス、ヘルペスウイルス、尖圭コンジローマ、梅毒など
クラミジア
性的接触を介する粘膜との直接接触により感染します。症状はおりものが少し増える、軽い生理痛のような痛み、不正性器出血などですが、無症状のことも多いです。進行すると、卵管炎、腹膜炎から不妊症になることがあります。
診断は性器の分泌物から核酸検査を行います。
治療はマクロライド系の抗菌薬を使用します。パートナーも同時に治療することが大切です。
淋菌
性的接触を介する粘膜との直接接触により感染します。
症状はおりものが少し増える、不正出血などですが、症状が軽く気づかないことも多くあります。
進行すると、卵管炎、腹膜炎から不妊症になることがあります。
診断は性器の分泌物から核酸検査をおこないます。
治療は抗菌薬の点滴を行います。パートナーも同時に治療することが大切です。
腟トリコモナス症
尿道や性器からの分泌物との接触で感染します。性的接触のほかに、下着・タオルなどを介しての感染することもあります。
症状は泡状の臭いの強いおりものの増加や外陰・腟のかゆみなどですが、症状が軽く気づかないことも多くあります。
診断は性器の分泌物から病原体を検出します。
治療は抗菌薬(メトロニダゾールまたはチニダゾール)の内服をします。パートナーも同時に治療することが大切です。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルスの感染より起こります。性的接触を介する皮膚や粘膜の病変との直接接触により感染します。
性器や肛門周囲などに鶏冠状(表面がとげとげした病変)の腫瘤が発生します。特徴的な形態を持つため、視診で診断することが多いです。
治療はクリームの外用で行いますが、大きなものや多発しているものは外科切除も検討します。
梅毒
梅毒トレポネーマの感染により起こる感染症です。性行為で粘膜や皮膚から感染します。
症状は性器や肛門、口にしこりができたり、全身に発疹が現れますが、一旦症状が消えるため治ったと間違われることがあります。
第1期
感染後約1か月で、感染した場所(性器や口など)に、できもの、しこり、ただれなどができます。
治療しなくても、数週間で症状は消えてしまいます。
第2期
感染後3か月で、手のひらや足の裏など全身に発疹ができます。治療しなくても、数週間から数か月で症状は消えてしまします。
神経梅毒
感染後治療せずに放置すると数年~数10年で、心臓、血管、神経に異常が現れます。
妊娠中の梅毒
梅毒感染者が未治療で妊娠したり、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通じて胎児にも感染がおこります。
死産や早産になったり、生まれてくるこどもの神経や骨などに異常をきたす(先天梅毒)ことがあります。
生まれたときに症状がなくても、遅れて症状が出ることもあります。
検査は採血検査(抗体検査)によって診断を行います。
治療は抗菌薬の点滴や内服を行います。